夏の災厄 Summer Calamity

この時期読んでよかった一冊。

開発者の命の危険を伴うワクチン開発、ワクチンの副反応をどの程度許容するかは感染の重症度に左右され得ること、役所の多忙、医療現場の多忙、「責任」、利権、一地方と全国あるいは東京、先の見えない不安が人を蝕むこと。

描写が時に生々しくグロテスクであるが、奇々怪々で現実味がないのとは違う。
起こり得るであろうことをあえて過激に書いているように思う。
だから読者は、慄きつつ、フィクションであると言い聞かせることはできる。

本質的には同じようなことが現実に起きているのかもしれないと思う。
ただ、物語と同様、救いはあると信じたい。

今から25年前の1995年に世に出た本だが、私にとっては今読む本だった。

夏の災厄 篠田節子 角川文庫